久渡寺入口の「子どもの森売店」が2021年11月で閉店するという話
先日旦那と編笠林道を歩いてきた。
弘前市の座頭石地区と、円山応挙の幽霊画「返魂香之図」で有名な久渡寺とを結ぶ林道である。歩いた感想は次回にするとして、今回は別視点のお話。
久渡寺入口へ到着すると、小さな駐車場に隣接する形で「子どもの森売店」が営業している。
久渡寺観音堂を目指す前に、トイレ休憩がてら、売店で売られているこんにゃくを食べようかという話に。店をのぞくと、そこにこんな張り紙が。
2021年11月23日、勤労感謝の日をもって、店が閉店するというのだ。ショックだ…。
目的のこんにゃくは売り切れだったが、腹が空いていたので昼食をとることを提案。わたしは天ぷらそば、旦那は焼きおにぎりを注文。
散策前にコンビニで昼食を買っていたが、そちらは後回し。閉店前に思い出を残したい気持ちと、ホカホカの温かいそばを食べたい気持ちとが入り混じる。
わたしたちの他にお客さんはいなかったため、店主に店の写真を撮っていいですかと聞くと「お好きに撮っていっていいですよ」と了承いただけた。
少し思い出を語る。
弘前の観光資源的には幽霊画が有名かもしれないが、弘前で育った身としては、久渡寺といえば子どもの森だ。弘前市のHPから、子どもの森の紹介を引用する。
久渡寺(くどじ)山を中心としたこの森には、両生類や魚類などを展示したビジターセンターや、学習植物園、あそびの森、キャンプ場などがあります。こどもの森までは、土淵川沿いにサイクリング道路もあり、ハイキングなどにも最適です。
保育園・小学校・中学校と、子どもの森には遠足でお世話になっている。
学校やバス停などから売店横の駐車場まで歩き、ビジターセンター周辺で自由行動をしたり、見晴らし台まで山登りをしたりなどした。
山登りといっても小学生でも登れる程度の距離だ。軽い運動をしている大人ならば、肩慣らし程度に行って帰ってできる、身近なハイキングコースといったところ。
遠足以外でも、家族や友人との山登り、ツーリングなど、体を動かす機会にはよく子どもの森を訪れたものだ。
ちなみに東京からUターンしてくるまで、わたしが弘前市で登ったことのある山は、この子どもの森の山だけだった。弘前市民の心のふるさと、岩木山すら2年前(2019年)に初登頂だ。子どもの森の山の名が「久渡寺山」というのも最近学んだ。いやはや全く地元愛に欠けている。しかしそれだけに印象が強い。
山といえば、子どもの森。そして子どもの森といえば、この売店だった。
遠足で来たときも、山登りをしに来たときも、ツーリングの中継地点として立ち寄ったときも、この売店が憩いの場だった。
久渡寺周辺にはコンビニも商店も存在しない。コンビニが台頭してくるもっと以前からこの売店は地域のオアシスであったと思う。
わたしも小さい頃、売店でアイスやジュースを買ってもらって、駐車場を走り回って遊んでいたように思う。当たり前に存在している場所であり、無くなることすら想像できなかった。今でも何だか信じられない。
開業して51年だという。1970年から、この場所で久渡寺を訪れる人々を見守ってきたのだな。
何故閉店するのか、詳しい話をもう少し聞きたいところだったが、土足で踏み入ってしまうような気がして控えておいた。
ただ、天ぷらそばと焼きおにぎりの味を存分に味わい、「氷」の旗がはためく入口や、バキや医療漫画が並んだ雑誌置き場や、ベンチが並んだ客席を目に焼き付けるようにして眺めたりしていた。
11月の閉店を前に、旦那とここを訪れることが出来て良かったと思う。何より閉店のお知らせをいち早く知れて嬉しい。
子どもの森や売店に思い出がある方は、無理のない範囲でぜひ閉店前に足を運んでほしい。自分もまた、散策がてら訪ねてみようと思う。今度は売り切れる前にこんにゃくも食べて、アイスも買っちゃうんだ。売店の思い出を1つでも多く、残しておきたいと、そう思う。