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冗長な戯言(たわごと)をつらつらと

【漫画感想】推しの子1~3

読んだ本・漫画の備忘録をつけていくことにした。

今回は「推しの子

内容にネタバレを含みますので、ぜひ読了後にお読みください。

 

 

 

 

推しの子1

 

 

この物語はフィクションである

というか

この世の大抵はフィクションである

この芸能界(せかい)において 嘘は武器だ

 

物語の概要

産婦人科医ゴローには、推しのアイドルがいる。アイドルグループB小町のアイだ。

彼の元に、推しのアイが妊娠した状態で現れる。

子供がいることを隠しアイドルは続ける、嘘をとびきりの愛だと告げるアイを、ファンとして支える決意をするゴロー。しかし彼は突然何者かに殺害され命を落とす。

気づいたとき、彼はアイの子供に生まれ変わっていた。

 

原作は「かぐや様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳戦〜」の赤坂アカさん。

作画は横槍メンゴさん。

 

 

ネタバレ感想

推しが16歳で妊娠。それだけでもセンシティブなテーマなのに、ページをめくるごとに不穏な気配を帯びていく第1巻。

双子のアクアは頭脳派、ルビーは直観派。2人が対照的に描かれており、重いテーマにも関わらず作品の軽快さがすごい。アイへの想いを体現するべく2人が生きる様は、誰しもがもつ「推しの存在」の偉大さを印象付ける。

 

展開が神がかっている作品であるが、登場人物の台詞もまた、いい。全てを引用したくなる。中でも1巻は、アイの姿を目に焼き付けてほしい。

彼女がアイドルをする理由は、決して誰しもが憧れるきらきらしたものではない。彼女が誰よりも愛を求めている。不器用だけれど誰よりも熱情的で人間くさくて、たとえ一旦カメラが止まっても、魅力的。瞳の奥にはじける星のような、火花のような、偶像としてのとびきりの生き様。アイという美しい人間を描いてくれて、ありがとうと伝えたい。

 

 

推しの子2

 

 

アクアの演技、ずっと努力してきた人の演技って感じがして私は好き(略)
こんな前も後ろも真っ暗な世界で一緒にもがいてた奴が居たんだって分かって
それだけで十分

 

物語の概要

アイ亡きあと、ルビーは母のようなアイドルになるため、アクアは推しを奪った犯人への復讐のため、芸能界入りを狙っていた。

芸能科のある陽東高校の入学試験を受け、アクアはかつて共演した天才子役・有馬かなに再会。彼女がヒロインを務める、漫画原作の恋愛ドラマに出演を打診される。

プロデューサーはかつてアイと交流のある人物だと知り、さらなる情報を得るためアクアは新人役者として撮影に挑むことになる。

 

 

ネタバレ感想

漫画原作の恋愛ドラマにありがちな、拙い役者陣、制作側都合の改変、現場と原作者との意識の剥離が描かれていく第2巻。

「観れる」作品にするため、本来の実力を投げ捨ててまで全体の調整役に回る有馬に、プロ意識を覚えると共に歯がゆさを感じた。アクアが現場にやってきたのは最終回の撮影日。この日に至るまで、有馬は一人孤独に耐えてきたのだろう。

アクアが自身の戦い方を悟り、有馬の抑圧された情熱を解放させるシーンに、胸が熱くなった。1巻に引き続き、展開における緊張と弛緩のタイミングが上手すぎる。

登場人物の思惑が錯綜し、次巻への期待が膨らむ。

 

 

推しの子3

 

 

芸能は私達そのものがコンテンツ

深淵を覗く時

深淵もまたこちらを覗いている事を忘れてはいけない

 

物語の概要

恋愛リアリティショー「今からガチ恋♡はじめます」、通称「今ガチ」に出演することになったアクア。構成に懸念を感じつつも、共演する高校生たちと親交を深めていく。

撮影が進み、個人差が浮き彫りになる中、事件は起こる。

火種が小さくともネットの影響力は計り知れない。エゴサから始まる、怒涛の第3巻。

 

 

ネタバレ感想

エグい結末だ。復讐のため、自身が命を救った少女を利用するのだな。

目的のためなら手段を選ばないタイプがいる。天秤の片側に倫理観すらのせれるのは何故だろうと思うのだが、絶望や喪失を経験すると世界は一変するのかもしれない。

アクアの行為の意味を知ったとき、あかねはどう思うのだろう。どうか天賦の才を誇り、強く生きていってほしいよ。

 

アクアは自身とアイの関係性に疑問を持つけど、読者としてもアクアの解答が知りたい。『あかねにガチ恋なんて許さない、お前は己の過去ととことん向き合ってもらう』物語の盛り上がりを期待し、黒い気持ちになる。でも最後には、アイのように愛を知って、幸せになってほしいんだ。

 

3巻の有馬。有馬は嘘が苦手だから、嘘まみれのアクアにいつも翻弄されている。可哀相だけど、嘘にちゃんと傷ついてくれる有馬が可愛い。

人生はそんなに上手くいかないけど、報われる瞬間もあると信じて努力し続ける。泥臭い生き方しかできない有馬が、好きだ。