語彙力が直情的になるが、
「悪役令嬢、セシリア・シルビィは死にたくないので男装することにした。」の登場人物が好きすぎる。
単行本5巻までの感想と無駄に長い邪な推し語りです。ネタバレしているので未読の方はご遠慮ください。
テンポもよくキャラもよくシナリオもよい画力もすばらしい、三方よしどころか四方よし作品。読んで。
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全体の感想
「悪役令嬢、セシリア~~」通称「悪セシ」は、乙女ゲームの悪役令嬢セシリアに転生した少女が、断罪ルートを回避するべく奮闘する物語。攻略キャラクターの力を借りつつ、次から次へと降りかかる困難に立ち向かう。
セシリアのルートはとにかく悲惨で、右を向いても左を向いても命の危機が伴う。時にくじけそうになっても、意志の強さと不断の努力で活路を切り開いていく。
わたしは「女性が奮闘する」物語が好きだ。同性が頑張っている姿は励みになるし、自分の子供や友人をガンバレ!ガンバレ!と応援しているような心地になる。と同時に、「女性が愛される」物語も、輪をかけて好きだ。
漫画の第1の見所が「セシリアの運命の行方」だとしたら、第2の見所が「セシリアの心を誰が射止めるか」であるのは疑いようがない。
セシリアは乙女系漫画にありがちだが、自身への好意に恐ろしく鈍い。セシリアの弟・ギルバート(通称ギル)と、王太子オスカーに病的なほど愛されているのに、想いに気づかない。
ギルとオスカーというWヒーローが、セシリアに翻弄されつつも、距離を縮めていく過程がいじらしくて、しんどくて素晴らしい。
以上のメインキャラ3名はもちろん、友人リーン、攻略キャラのジェイド、ダンテ…と、登場人物が皆愛しい。新キャラが登場するたびに着々とメインの物語(セシリアの運命の如何)が進行するため、展開にストレスがない。進行と同時にギルとオスカーの親密イベントが均等にあるため、「こっちのキャラだけ贔屓されてる!」みたいな不満もない。
セシリアはどちらの気持ちを受け入れるの!?どっちの気持ちもわかる!!どっちにも幸せになってほしい!と読者も翻弄され、読む手が止まらない。
5巻まで読破したが、6巻発売が待ち遠しい。
セシリア・シルビィの魅力
まず目が大きくて、くりっくりできらきらで可愛い。顔から目が零れ落ちたら、両手で大切に包み込みたくなる。華奢なのに、素晴らしい男装ぶり。友人のリーンが「男の子が恥ずかしがりながら女装するのがいいんじゃない!」と力説していたが、首がちぎれるほど頷きたい。金髪なのに異様にチャイナ服が似合う。庇護欲をそそる。作画が神ってる。
セシリアのエピソードで特にシュキなのは、上記のチャイナ服シーンとベッドにもぐりこむシーンだ。
チャイナ服シーンはオスカーとの親密イベントになる。リーンにチャイナ服を強要され逃げ出したセシル(セシリア男装時の名前)は、オスカーと共に空き室に隠れるのだが、オスカーの上にしなだれかかるセシリアの肢体の美しさよ。スリットからすらりと伸びる太もも。彼の胸に寄り添う金糸のような髪は、1本1本が美術品のようだ。オスカーが劣情に耐え忍ぶ様と、その後のセシルとの会話は、尊さから表情が欠落しまくる。見てほしい。
ベッドに潜り込むシーンはギルとのイベントだ。ギルとのやり取りがたまらないのはもちろんだが、ここで指摘したいのはワンピースネグリジェの作画だ。薄手で透明な生地だとわかるのは、身体のラインがうっすらと描写されているからだ。背後斜め上から見たセシリアは、ふわっとした臀部が愛らしい。深夜にそんな服でギルの部屋に来るな!!あと都合よくベッドに潜り込むな!!!
いくら弟とはいえ、セシリアの男性観は幼稚だ。彼女の純粋さは読者に安心感を与えてくれるが、ギルの思慕を掻き立てる。
煩悩と理性の狭間で揺れ動く男性と、純粋無垢なセシリア。この対比を享受するためにシリーズを読んでいるといっても過言ではないかもしれない。
ギルバート・シルビィの魅力
左目の下にほくろのセクシー担当。黒髪で筋肉はあるが細身。策謀に長けている。幸せになって欲しい登場人物、堂々の第一位。
誰よりもセシリアの近くにおり、転生者である事実すら知るよき相談者、よき弟。不遇な幼少期故に真っすぐな愛情表現が不得手。誰よりも己に愛を降り注いだ義姉に異常に執着する、危険人物でもある。
王太子オスカーの手紙を毎月破棄しているのはやりすぎではないか。鈍感な義姉は未来永劫気づかないと信頼しての所業だろう。セシリア、舐められている。
ギルの親密イベントは、煮詰められた彼の不安や執着がとろりとろりと溶け出すような、濃密さがある。
秘めた想いは曇りなく純粋なのに、きれいにラッピングして正面から手渡せない。彼女のほうから堕ちてくれないかと策を張り巡らせてしまう。オスカーを困惑させるのがギルなら、ギルの弱さを突くのがリーンだ。Wヒーローそれぞれが戸惑いを抱えているのが良いのだが、ギルはもう、可哀想だなって思う。
義姉が一番の拠り所なのに、彼女は盲目でギルに執着してくれない。もし彼女が命を失くしたり、自分ではない誰かを選んだら、彼は正気を保っていられるのだろうか。たぶん手段を選ばず彼女の傍らにあろうとするだろうけど、もう読者としては見てられんのよ。彼女のためになるならと、不幸を甘んじて受け入れちゃうのよ。
愛から永遠に拒絶されたギルを見たくない。だから、セシリアがどっちとくっつくかという究極の2択を提示されたら、ギル頑張って!ってなる。リーンから発破をかけられ闇落ちしそうになっても、未来にしがみ付いて何が何でも幸せになってほしい。原作の小説版では漫画版より先の展開を楽しめるだろうけど、楽しみを先にとっておきたいのでまだ読まないでおく。
オスカー・アベル・プロスプレの魅力
王太子かつセシリアの婚約者。赤い髪色でがっしりとした身体。セシリアに負けず鈍感。責任感に厚く、頭も切れる。やや直情的だが芯があり、誠意がある。喜怒哀楽が豊かで、その顔面で物語をシリアスにもギャグにもお色気にもできる、有能さの塊。
幼少期に1度会っただけのセシリアをひたすらに追い求めるという、離れ業をやってのけるオスカー。ギルの執着とはやや質が異なり、初恋をひたむきに追い求める少年のような清々しさがある。王太子として、男としての自信を積み重ね、彼女に見合う人間になろうと努力した情熱が伺える。赤い髪色にぴったりだ。
オスカーにももちろん、長年焦がれた相手と幸せになってほしい。何故ならギルと違い、オスカーはセシリアの運命の詳細を一切知らされていない。何故彼女が男装しているのか、自身と距離を取ろうとしているのかわからず、ついには恋敵の手により「知らないフリ」を強要されるのだ。全ての事情を彼女のために飲み込み、それでも力になりたいと願う。大型犬のような従順さと愛。全て報われて、大きく穏やかな愛に包まれてほしいと思う。
が…!オスカーはたとえセシリアを失っても、新たな運命を切り開いていけるんじゃないかと思ってもしまう。愛を精一杯表現でき、伝えられるオスカーだからこそ、もし恋に破れても、悲しみすら次へ進む原動力にできてしまうんじゃないかと。王太子として新たな妻を娶ったら、目の前の人物を愛そうと試行錯誤するだろうし、たとえ生涯独り身だとしても、何らかの形で彼女の力になることで淡い幸せを享受できてしまいそうな…。何においてもタフな男なんじゃないかなって思う。ギルは違う。彼はメンタルが弱い。
でもオスカーにも報われてほしい。セシリアには永遠にオスカーとギルの間で揺れ動いて、読者をやきもきさせてほしい、と思ってしまうが…それで果たして読者側は満足なのだろうか…わからない。
とにかく、オスカーの百面相がこれからも楽しみで仕方ない。チャイナ服シーンにおける赤面顔と、国外逃亡を仄めかされた後の絶望顔は、屈指の名顔面だと思う。人間性に優れた男性が、戸惑い慄く顔を見るのは、どうもゾクゾクする。
無駄に長くなってしまった。本当に無駄に長くなってしまった。ダンテとかヒューイくんとか、もっと語りたいけど、今回はここまでにしておく。
ここまで読んでくださった方に真剣に感謝。今読んでいる貴方の悪セシ推し語りが読みたい。二次創作が欲しい。公式更新が今から待ち遠しい。あぁ、楽しい。