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【感想】悪魔的番組・カンテレ「知らないのは主役だけ」

TVerで、カンテレのTV番組「知らないのは主役だけ」を見た。

悪魔的仕掛けが興味深かったので、感想を書く。

一部ネタバレもあるので、未視聴の方はご注意ください。

 

tver.jp

 

ドラマの概要

錦鯉・長谷川雅紀がドラマ初主演!

相方・渡辺隆がスキャンダルに苦しむ男を熱演!?

“何も知らない主役”長谷川の日常を約2カ月間隠しカメラで撮影して紡ぐリアルとフィクションが混在した新感覚ドラマ。

主役のリアルな感情を捉えた隠しカメラの映像に、相方・渡辺隆をはじめとする脇役だけで描くドラマシーンを織り交ぜることで誰も先が読めない演技を超えた「究極のリアリティーショー」をお届け! (TVer番組説明より)

 

主役の錦鯉・長谷川さん以外、全員ドッキリの仕掛人というドラマ×リアリティショー。大物役者、先輩芸人、医者や記者などリアルなエキストラ布陣が、脚本通りに本格ドラマを展開する中、1人何も知らぬ長谷川さんの「リアル」な反応を楽しむ、2段仕掛けの作品。

脚本は「サンクチュアリ-聖域」「半沢直樹」で知られる、金沢知樹さんだ。

 

ドラマの構成的感想(ネタバレ有)

45分というコンパクトな内容に関わらず、最後までじっくり堪能してしまった。筋書はシリアスなのに、視聴者側には「実はこれドッキリなんだよなぁ」みたいなフィルターが常にあるので、長谷川さんが1人深刻な顔をしていても、俯瞰で笑えてしまう。ドラマに没入しすぎず、あくまでショー的に見せる構造が興味深かった。

 

しかしまあ、悪魔的な番組である。主役が長谷川さんじゃないと成立し得ないというか。制作者側が、長谷川さんを信頼した上でのキャスティングだと思うのだけど、にしても無知な人間に超!酷な二択を迫り、人生をかけて選択する様をショーとして視聴者に提供するって。TVに出演するって大変やな!TRPGでもこんなひどいのやらんで!

 

この番組が成立するために、主役に求められる点は3つ。

①ドッキリに気づかないこと

②逃げずに最後まで問題に向き合うこと

③ネタバラシしても遺恨が残らないこと だと思う。

①から③までをパーフェクトに満たす長谷川雅紀さんという人間は、あまりにも純粋で素直で単純だ。制作者の思うツボだ。

 

錦鯉の2人にコンビ愛があるのも演出の要になってんだろうな。スタッフが憎たらしいねぇ(笑) だって最後に迫られる二択のどちらにも、愛があってドラマがあって。長谷川さんが答えさえ出してくれれば、もうドラマとしては成立しちゃうんだから。役者がいい演技さえしてくれれば、既にシナリオ勝ちしてるのよ。問題を持ち帰らせないよう、砂時計で逃げ場無くすのもうまい。

 

相方の渡辺さんはどういう気持ちでこの仕事を受けたんだ。「面白い番組だな」くらいの感じだったのかな。情緒を揺さぶるドッキリはよく見るけど、ドッキリにかけられる人をここまで案じたことはない気がする。長谷川さん、終わったらショックで寝込んだりしないかしらって。それ程までに時間をかけ、緻密に作りこまれていたって話なんだけれどさ。

ただやはりキャスティングの妙というか。主役を長谷川さんにしたのは素晴らしすぎた。ネタばらしされた後、長谷川さんは「変わった番組ですね」と一言。その言葉で共演者・スタッフ全員を一斉に笑顔にし、自分も破顔している様子は、視聴者を何より安堵させた。やはり長谷川雅紀がTHE主役なのだ。

皆で笑い声をあげ現場が一体になった様子を、番組最後にちょろっと流すとは。番組制作陣め、ズルいぞ!

 

ドラマの物語的感想(ネタバレ有)

やっぱり最後の二択、どっちを選ぶのかは気になっちゃった。

渡辺さんを身綺麗にして救うこともできたけど、錦鯉を失うことのほうが恐ろしかったんだねえ…。

わたしなら胆石渡しちゃうよ。自己犠牲で全てが解決するならさ。でもさ、お金よりも名誉よりも地位よりも、2人が築き上げてきた関係性とか、漫才とか、芸とか、今の錦鯉を作り上げた核の部分が何より大切だったんだねえ。

番組制作陣の思惑にまんまと乗るようだけど、人間の芯の部分を見せられるとやっぱ弱いというか…グッと来てしまう。視聴中、泣いちった。嘘のない、感動的なドラマに飢えているのだ。

 

二択を迫られた際の、長谷川さんと渡辺さんの最後の話し合いはリアルでよかった。

渡辺 「声と顔だけでやってきたんだよ俺なんて今まで…」

長谷川「いや動きも…」

渡辺 「あ、動きもあったか…」

このやりとりは切ないながらも可笑しくて。本気で話してる時に生まれる、一瞬のきらめきというか。2人の関係性からしか生まれない、珠玉の会話だと思う。

 

ハリウッドザコシショウさんや、ばいきんぐ・小峠さんなど、芸人さんが登場するシーンも、お笑い好きとしては嬉しかった。飲み会のシーンなどかなりリアルに映っている。雑な仕掛人ではなく、名作ドラマのパーツとして芸人が扱われるのは嬉しいなと思う。

 

最後に

正直好みは分かれる番組だと思う。

悪趣味だという人もいるだろうし、人の心はないのか!と思う人もいるだろう。

しかし、主役が錦鯉・長谷川さんだから、安心して最後まで見てほしい。これはあくまでドッキリで、エンタメショーで、バラエティ番組なのだと、わたしは思う。

スタッフ、そして相方渡辺さんが全身全霊の信頼をおいた、主役・長谷川さんの勇姿を見届けてあげてほしい。

 

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