「推しの子」4〜5巻の備忘録&感想です。
内容にネタバレを含みますので、ぜひ読了後にお読みください。
推しの子4
その人に言われたの
もし私がアイドルになったら推してくれるって
その時からずっと
アイドルになる事を夢見てた……
物語の概要
黒川あかねと形だけのお付き合いを始めるアクアを横目に、アイドルグループ新B小町に新たなメンバーが加入する。
ジャパンアイドルフェスでの初ライプも決定し、勢いにのるグループ。レッスンにセンター決めと盛り上がる中、アクアと有馬かなの関係がギクシャクし始める。
ルビーの夢が形を成し始める、汗と熱意の第4巻。
ネタバレ感想
打ち上げエピソードについて。あかねがこれ以上誰かに傷つけられる図式を見たくなかったから、現実的に物事を考えてくれてホッとする。
アクアの「俺はあかねに女優として強い興味を持っている」の台詞。嘘は言っていないんだ嘘は…。
妥協点というか、落としどころを見つけて2人が前進する様子、ほろ苦くも良い関係性だと思う。わたしは夢や理想だけで人が繋がるのは難しいと思っている。弱さを開示し、認め合い、許し合いながら生きるのが愛ではなかろうか。あかねとアクア、よき仕事仲間でいてほしいな。
新生B小町だが、有馬かなの葛藤が多く描かれていた。彼女は真面目な子だ。グループのため、誰かの期待に応えるために生きてきたから、わがままに振舞えない。でも誰かが応援してくれるなら、いくらでも努力できるし、逆境をバネにして輝ける。
今回もルビーやアクアに翻弄されつつも、最後は自分の足で地を踏みしめる姿をしっかと見せてくれた。
そんな泥臭くしたたかな有馬と、あかねが次巻でガチガチに激突する。相変わらず展開のエグみがすごい。好きだ。
ルビー、まだアイが持つ輝きの片鱗しか見せていないが、これからどう化けるのだろう。アクアだけでなくルビーが壁を乗り越えるエピソードも楽しみで仕方ない。
推しの子5
物語の概要
アイの秘密を探るため、2.5次元舞台に出演を決めるアクア。
黒川あかねと有馬かな、そして劇団ララライ看板役者・姫川の才能が火花を散らす。素晴らしい舞台になるかと思われたが、脚本の原作者・鮫島アビ子が見学に訪れ事態は急変する。
感情と記憶に翻弄され始める、第5巻。
ネタバレ感想
舞台に携わる仕事をしていた際、感情を動かせとよく言われた。単に台詞を言うのが役者の仕事ではない。キャラクターの心情を、実際に役に成り表現しなければならない。見せる技術が稚拙でも役者の心が動いていれば、お客様に伝わると。
ではどのように感情を動かすか。自身の過去の記憶を精細に掘り起こしたり、当時の肉体的状況を再現することで外面から内面を揺り動かしたり、黒川あかねのようにプロファイリングしたり。手段は様々だが、何ぶん感情は扱いづらい代物だ。演技が好きならいいだろう。当人の感情と、役の感情を分けて考えれるなら、役者は神にも俗物にも静物にも成れる、最高の職業だ。
何らかの理由で演技自体に嫌悪感を覚えたり、受け止めきれない感情や台詞がのしかかってくると、相当しんどい。アクアは目的のために己の壁を乗り越えていくんだろうか。
幸せや喜びを見つめるアクアを、ゴローの記憶が堰き止める。アイを救えなかった過去を見つめ続ける妄執に似た感情と、未来を掴み取ろうとあがく希望とが同居するラスト。ここで5巻が終わるのはあまりにも引きが強すぎる。
アクアにもルビーにも幸せになってほしい。
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