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冗長な戯言(たわごと)をつらつらと

傷だらけの芸人たちの雄姿に刮目せよ、Netflix「トークサバイバー!」が面白い

CBCラジオ・むかいの喋り方にて、向井さんが「Netflixで配信される「トークサバイバー!」に出演したから見てね」と告知をしていた。ネトフリで日本制作のバラエティ番組ねぇ、面白いのかしらん、とそのときは話半分で聞き流すに留めた。

何週か経ったある日。いつものように、夫婦それぞれが自身のPCに向かっていると、隣で旦那がNetflixを見始めた。こちとら英語勉強中なのに、何やら音声が賑やかだなとちらと視線をやると、まさに「トークサバイバー!」を見ているではないか。おやおや、本当に全世界に日本のお笑いが配信されているのだなと感慨深く思いながら、意識を英語に戻そうとするも、芸人さんのトークに耳が吸い込まれる。最初はちら、ちら、と作業を止め止め、盗み見ていたが、もう無理、気になる。結局第1話の途中からがっつり視聴体制についてしまった。何だこれ、めちゃくちゃ面白いじゃないか。

 

www.netflix.com

 

少しばかり番組について説明しておく。

トークサバイバー!」は、「ゴットタン」で有名な佐久間宣行さんがプロデューサー・企画演出を担当する、ガチガチのお笑い番組だ。

番組はドラマパートとアドリブパートに分かれている。ドラマパートでは参加芸人と、ドラマの第一線で活躍されている実力派俳優たちが、台本に沿ってきっちり真面目に演技する。アドリブパートではドラマの展開を受けてお題がふられ、芸人がそれぞれアドリブでエピソードトークを披露。トークが最も「面白くない」と判断された芸人が、即ドラマ降板。その様子を別室で観察しているのが、千鳥・ノブさんと滝沢カレンさん。2人はリアルタイムでコメントやツッコミを入れてくれる。一連の流れを繰り返しながら、シーズン1は展開する。

 

わたしは視聴中、きゃっきゃきゃっきゃと悪童のような声で笑い続けていたと思う。何故にそこまで引きつけられたのか。

 

まず、ノブさん・カレンさんら天の声組の立ち位置が秀逸だ。ドラマの設定は学園物で、出演者全員が高校生としてなりふり構わずガチ演技をする。おいおい待て待て待て、40超えとるいい大人おるぞと視聴者はギャップに戸惑うだろう。そのバランスを取ってくれるのが、天の声組だ。2人の柔らか~い横やりが入ることで、わたしたちは本格派きどりのB級ドラマでなく、あくまでバラエティを見ているのだと正気を保っていられる。番組冒頭「Netflixシリーズ」の表示にすら感想を述べる点に、「全世界配信なんて知ったことか、わしらはわしらのペースでやるわい」という千鳥イズムを感じた。

 

また、視聴者目線で、アドリブパートが非常に笑いやすい作りなのがよい。ドラマパートとアドリブパートは、分割されているとはいえ、とてもシームレスだ。アドリブする際も、芸人たちは本格ドラマの出演者としての立ち振る舞いを求められる。カメラが回っている限り、一分一秒とも役を降りることは許されないのだ。どういうことか。

まず、誰かが喋っているときは、天の声以外は横やりを入れることは許されない。滑っていようともフォローは出来ない。手を叩いたり、大声で笑ったり、リアクションで場を盛り上げることは許されない。可能な限り笑いをこらえ、話に耳を傾けるしかない。まさに当人にしては生き地獄。誰も助けてくれぬ踊り場に、裸一貫で立ち続けなければならぬ。ウケねば降板。死、あるのみ。

死に物狂いでトークをひねり出す仲間を見守りながら、芸人たちはその後どう行動するか。1人のエピソードトークが終わると、誰かしらが役を降りない範囲でそっとコメントを入れる。まるで傷ついた戦士をねぎらうがごとく、「そうだよな。お前の気持ち、よくわかるぜ」「〇〇だもんな…」「よく言ってくれた」……。役柄上、ツッコミは許されない。だから「YES」の気持ちだけでも伝える。その伝え方で、ちょっとでもトークを盛り上げようとする、熱い芸人魂。

一方その頃わたし(視聴者)は、ツッコミや天丼もない、極めて純度の高いエピソードトークを堪能。また、役を降りないように笑いをこらえ、脳をフル回転させて四苦八苦している様を見て、ひたすら笑い転げていた。

映画において、役者がおいおい泣いているシーンでは、逆に心が冷めたりしないだろうか。お化け屋敷で同行者がビビりまくると、自分は落ち着いたりしないだろうか。相手の感情が前面に出てくると、対する側は一歩引きがちだ。

誰かが何かを表現すまいとじっと堪える様子に、視聴者としては引きつけられ、思わずボディが無防備になってしまう。そこに叩き込まれるエピソードトークのアッパーカット。そりゃあ、決まりやすいってもんよ。

見守る芸人たちが、「YES, LET'S」の円陣を組んでいるのもよい。「自分以外の誰かを降板させたらいい」なんて考えは彼らにはない。とんでもない状況に放り込まれたが、我々はとにかく仲間なのだと。とにかく今を乗り切ろう、乗り越えようとする気概が、すがすがしい。

 

日本のバラエティがどこまで世界に受け入れられるのか、そんなん知らん。とりあえず、わたしは「トークサバイバー!」が面白いと思った。こんなに純粋に笑えて、出演者を温かく見守れる番組、久しぶりだ。降板するしない関係なく、とにかく出演者は持てる力を全て出し尽くして、傷だらけになって「お笑い」をしている。その生き様、しかと目撃していきたい。応援しています。

 

 

余談です。

芸人芸人と再三述べたが、なんと女性タレント・峯岸みなみさんも、しのぎを削る出演者に数えられている。わたしは現在エピソード3までしか視聴できていないが、峯岸さん、只者じゃないよ。あんた…本物の芸人だよ……。

ぜひ峯岸さんの雄姿、見届けてほしい。