書きたい分だけ書くブログ

冗長な戯言(たわごと)をつらつらと

【漫画感想】ツンデレ悪役令嬢リーゼロッテと実況の遠藤くんと解説の小林さん1〜3

読んだ本・漫画の備忘録&感想です。

今回は「ツンデレ悪役令嬢リーゼロッテと実況の遠藤くんと解説の小林さん

内容にネタバレを含みますので、ぜひ読了後にお読みください。

 

 

 

 

ツンデレ悪役令嬢リーゼロッテと実況の遠藤くんと解説の小林さん1

 

 

ーーもしや

これこそが我ら王族のみに聴こえるという

伝説の『神の声』なのか…!?

 

物語の概要

女性向け恋愛シミュレーション『マジカルに恋して』

通称『まじこい』に登場する悪役令嬢、リーゼロッテ。人知れず苦しみを抱える彼女は、ほぼ全てのルートで死ぬ運命にあった。

放送部の遠藤くんと小林さんが画面越しにリーゼロッテの恋路を応援していると、その熱烈な実況が、リーゼロッテの婚約者ジークヴァルトに届いて…。

最高を超えた最高のハッピーエンドを目指して、2人は今立ち上がる。

 

 

ネタバレ感想

真面目で慈しみがあるのに、とんでもなく素直じゃないリーゼロッテ。手を差し伸べたいのに、却って人を傷つける振舞いをしてしまうのは何故か。思考回路を理解できない自分はまだまだ未熟だと感じる。

 

誤解されがちな彼女の心を、遠藤くんや小林さん、ジークが読み解き、本心を白日の下に晒す。リーゼにはなかなかに恥ずかしいことだろう。羞恥を感じた際、全力で恥ずかしがってくれるリーゼが可愛い。ツンデレと称されるが、「恥ずかしくないもん!」と意地は張らない。いや、張れないところが隙がある。よい。

事実が許容できず恥ずかしい訳で。リーゼは自信がないのね。好意を向けられる経験が少ないのかしら。公爵家の長女、そして王位継承者の婚約者という重圧もあるんだろうな。

一方ジークはどうしてあれほど素直なのか。神の声に疑いの眼を向けることなく、一心に行動できる。信心深さとは時に恐ろしいものよ。ジークが真人間でよかった。

 

真面目に努力した人間は報われてほしい、願わくば想い人と結ばれてほしい。そんな理想を空論と馬鹿にせず、キュートなリボンをつけて読者に差し出してくれる。砂糖菓子のような物語。

 

 

ツンデレ悪役令嬢リーゼロッテと実況の遠藤くんと解説の小林さん2

 

 

私がルールやしきたりを知らずに失敗したとき

遠巻きに笑うんじゃなく

ちゃんと叱って教えてくださるのは

リーゼロッテ様だけなんです

 

物語の概要

実況でハッピーエンドを目指す遠藤くんと小林さんは、ゲームの奇妙な事実に気づく。

ゲームが進むほどにリーゼロッテはフィーネと親交を深めていくが、その様子を見た婚約者ジークヴァルトにも気持ちの変化が訪れて…。

フィーネと護衛騎士バルの関係も深掘りされる、ツンデレコメディ第2巻。

 

 

ネタバレ感想

登場人物の心の成長は、読者の心の栄養分である。2巻もよかった。

ジークがリーゼへの気持ちを言葉に出来たのが尊い。素直になれない彼女をおもんぱかり、愛情を返してやる。2人の不器用な返歌よ。美しい。

リーゼも愛されている自覚を持てたらいいのにと思うが、物語の肝の部分なので、そう簡単に丸く収まっては困る。

一方、リーゼの一途さに突き動かされ、ジークに恋の自覚。王太子キャラなのに一切擦れず実直な彼の恋は、青春ドラマのように清々しい。2人には略奪愛のようなドロドロした関係性がなく、ストレートに応援できるのが嬉しい。

 

バルの無自覚はやっかい極まりない。直感的なフィーネとよい相性だ。

恋や愛の形は人それぞれだ。言葉であれ、行為であれ、その形を正しく理解し表現するには確かに時間がかかる。リーゼとジークは愛を自覚し表現する段階にあるが、バルとフィーネは恋の芽生えの段階。うずうずし、芽吹く、春。桃がこぼれるように咲くような、瑞々しい恋になるとよいな。

 

 

ツンデレ悪役令嬢リーゼロッテと実況の遠藤くんと解説の小林さん3

 

ヘタレ!!

 

 

物語の概要

リーフェンシュタール領で夏休みを謳歌するリーゼロッテとフィーネ。突如爆撃と共に2人の前へ現れたフィーネの母親は、意外な真実を明らかにして…?

遠藤くんと小林さんもついにデートをすることに!街中で出会ったある人物がこれからのゲームに与える影響とは?

現実とゲームとがじわじわ混ざり合ってゆく、第3巻。

 

 

ネタバレ感想

2巻はやや空気気味だった遠藤くんと小林さんの恋が進展。2人の身長差がとてもかわゆいのです。

現実は現実、ゲームはゲームで恋愛模様が進展するかと思いきや、謎の人物・久遠の登場で、一気に2つの世界が絡み合う。見せ方がとてもお上手でワクワクします。

 

今巻はリーゼの策略家っぷりに惚れ惚れしました。ページをめくって「ヘタレ!」の台詞が目に飛び込んできた瞬間、「そうーーーー!!誰かバルに言ってくれって思ってたのーー!!」と内心絶叫。

ようやくフィーネへの愛を自覚し、身を捧げる決意を強固にしたバルの前に、本人がご登場。クローゼットの中で三角座りして、両手で口をおさえ真っ赤になったフィーネ。可愛いがすぎる。弱り果て立ち尽くすバルの前で、脳筋の彼女がしおらしくしている様は、何て絵になるんでしょう。わたしはクローゼットになりたい。

 

しかしまあ頼りになるぞリーゼロッテ!と思っていたら、リーゼの心にも黒い影が忍び寄る。フィーネはゲーム内の記録がフラッシュバックしていたが、もしかしてリーゼにもifの世界線が見えているのだろうか。

どうか想い人を頼むぞジーク。バルのようにヘタれている時間はないぞ。

【有吉の壁】【感想】即興ユニットの壁を越えろ!おもしろホームセンターの人選手権

2022/6/15放送の有吉の壁、非常に見応えがあったため、遅ればせながら備忘録を残す。

芸人さんたちのお名前は敬称略で失礼します。

 

 

 

オープニング先行動画

「【芸人全シャッフル】奇跡のコンビが誕生しました【有吉の壁】【オープニング先行】」と題した動画。

本編でほぼカットされたコンビ決定の瞬間を見せてくれる。が、気づいたら非公開になっていた。辛い。名残惜しいので、動画跡地だけリンクで埋め込んでおく。

 

 

ネタバレ感想

約20分間となかなかに長い動画だが、立て続けに2回視聴してしまった。

引きの強さを感じたのは、トップバッターのコンビ・ヤング。何気に絡みが少ない2人の化学反応が楽しみだ。

きつね淡路とハナコ菊田のコンビ・パワーは、結成時のリアクションが秀逸。淡路のあとからゆっくり登場する菊田。YouTubeのコメ欄の「重役出勤」のコメントに笑わせてもらった。

 

全ユニットの登場から退場まで見届けられるし、芸人同士の関係性も伺えて、ファンとしては嬉しい限り。有吉の壁は(YouTubeチャンネルは特に)毎回各々にスポットライトを当ててくれるので脇役がいない。家族のような明るい空気感に、惹きつけられる。

 

 

 

本編(2022/6/15放送)

島忠ホームズ 北赤羽店が全面協力。ホームセンターにいそうな面白い人になりきり、有吉を笑わせたら1ポイント獲得。

くじ引きでコンビ・トリオ・4人組を結成し、即興でネタを披露する。

ブレイクアーティスト選手権では、シソンヌがまたもや麺の歌を披露。阿佐ヶ谷姉妹率いる「おたから塚歌劇団 うめ組」も新団員を迎え、パワーアップし凱旋レビュー。

 

 

ネタバレ感想

言及したいコンビごとに触れていく。

 

コンビ・パワー

1番気に入ったコンビ。

ハナコでは岡部と秋山の影に隠れがちな菊田だが、わたしは芸人味の薄い彼が好きだ。THE一般人を是とするかのような佇まい、芸人のネタに誰よりも大口をあけ手を叩き笑う様。見ているとどことなく肩の力が抜けて、ちょっと元気が出る。

パワーは淡路主導かと思ったが、菊田テイストのネタにまさかの全振り。シュールな音源と振り切ったパフォーマンスで芸風を確立。Hulu行きを幾度も回避し、放送ネタは3つ。最後の最後には〇を勝ち取り、即興ユニット選手権のトリをも務めた。

すだれ用釣り具も、シュールレアリズム~~~も、行儀が悪い菊田~~~、も大好き。笑った。淡路のサポートの才が遺憾なく発揮されたのもワンダフル。

 

トリオ・てっぺん

マヂラブ野田の漫画テイストのネタを軸に、錦鯉長谷川のおバカなボケ、シソンヌ長谷川のスタンダードなツッコミ。何とも相性のよいトリオである。1番好きなネタは島忠デビル。気持ちよく笑わせてもらった。さすが賞レースチャンピオン。

 

コンビ・同窓会

寝ちゃった猫は、画(え)としても、世界観としても、秀逸すぎる。

おじさんと猫だよ?可愛いじゃんね。

 

トリオ・バンジージャンプ

ラップバンドネタ1本で貫き、同窓会とコラボまで披露。キャラがバラつく3人だが奇妙に調和していた。

他者に迎合しない(できない)パンサー尾形とシソンヌじろう。パーパーほしのの音圧が低い高音。熱量とノリさえあればネタは完成するという、完璧な事例。

 

コンビ・コスモス、愛人

パーパーあいなぷぅががっつりボケていて新鮮。

きつね大津を「ガチの嫌われ者」と称する蛙亭イワクラが、ソファーに寝ころび大津の背に足をのせるのを見て、どこかホッとする。

2組とも女性に花を持たせるのが上手い。さすが男女コンビの蛙亭中野と、プロデュース力に定評のある大津だ。

「こう見えても奥さんいるんで」言う中野。意外に男らしく、演技力があり、体も張れるので、最近私の中の中野株価が急上昇中。蛙亭の「じゃない方」では決してないのだ。

 

コンビ・ヤング

コンビAを引き、ネタ見せトップバッターを務め、静止画ネタも見せてくる。即興ネタなのに完成度高すぎないか。

「沖縄実家だからいいや!」のワードセンス然り、木切れ選びに実況する間合い然り、小汚い泥棒と冷静な警察官というキャラ付け然り。有吉が言う通り、確かにこの2人「ずるい」

 

コンビ・譲り合い

放送ネタこそ少なかったものの、「青空~~~♪♪」が好きすぎる。森三中黒沢と三四郎相田のキュートさがうざくて花丸すぎる。

 

トリオ・おもしろ4人組

とにかく明るい安村の、刹那のネタにかける熱量の恐ろしさよ。巻末の2人に突如召喚されオチ担当になる映像は、まさに即興の醍醐味。さらば森田の皮肉がもっと見たかった。

 

トリオ・おっちょこちょいちょいズ

ツッコミ、小ボケ、大ボケのバランスが非常に取れていた。後輩の四千頭身都築が、癖のある同期2人(ジャンポケ太田・ジェラードン西本)に翻弄される図に好感。都築の身体能力、体を張る意気、コミュ力の高さが発揮されていて、わたしはちょっと嬉しい。都築はもっと評価されてほしい、先輩に絡んで前に出てきてほしい。

 

コンビ・トレインスポッティング

「なんか村上が気に入らない」の一言で、×評価をエンタメにする有吉のすごさ。マヂカルラブリー村上とハナコ秋山が、汗臭くバタバタしてる様がいい。パンダ好きだよ。

 

トム・ブラウンの2人

2人が配属された両グループとも、ネタがトム・ブラウンに侵食されていた。恐怖。

即興ユニットらしいネタも見たかったが、これぞトム・ブラウン。

 

 

ブレイクアーティスト選手権は2組とも大のお気に入り。

 

おたから塚歌劇団 うめ組「チェンジ・ザ・クロス」

阿佐ヶ谷姉妹えりこの歌唱力大爆発。低めの発声と、溜めのあるダンスが優雅。また、サビ前の「さあ!」「いざ!」の呼び水が、勇ましくて好き。

えりこはワイルド紳士、阿佐ヶ谷姉妹みほはやんちゃ系、ヒコロヒーは穏やか王子、新メンバー吉住はスマート、あいなぷぅは小動物な姫。設定が出来すぎている。

ぜひフルバージョンで歌をお聞かせいただきたい。「武道館2回目があるなら、元宝塚の皆さまをゲストに迎えて歌ってほしい」というYouTubeコメントよ、貴方は神か。次回作にもさらに期待したい。

 

SOBBA「二文字のあれ」

まんまABBA。それがよい。

歌の内容ではなく、長谷川のリアクション(ばばばばばばばば)で笑わせに来るのがずるい。YouTube動画ではスタッフの編集と、長谷川いじりが光る。ぜひ皆さまも無限長谷川してほしい。

 

 

 

優勝ユニット発表

「【特別編】優勝はどのユニットに?即興ユニットの壁!優勝者発表!【有吉の壁】」と題した動画。

即興ユニットの壁MVPを発表している。

 

youtu.be

 

ネタバレ感想

MVPはバンジージャンプ。即興ユニットらしいまとまりの無さ、爆発力が新鮮だった。誰一人「NO」を口にせず、退かぬ、媚びぬ、省みぬを体現。再結成が望まれる。

 

パワー激推しだったので、2人のコメントは嬉しかった。

 

菊田

すっごい楽しくて…

今日初めて、スベるってこんなに悔しいんだなって…初めてわかりました

 

淡路

本当に僕ら、今日ちょっとだけ面白くなれました

 

別天地で悔しさや喜びを知り、また一つ強くなって帰郷する勇者たち。漫画か!

笑いあり、ちょっと感動ありで、番組放送後まで楽しませてくれる有吉の壁。これからも追いかけていきたい。

 

 

huluで見逃し配信してるらしいので、気になった方はこちらから↓

www.hulu.jp

【ブログ2年目突入】文章は単なる救いでしかない

2021年6月23日に、はてなブログを開設してから1年が経った。

 

clton.hatenablog.jp

 

1年目の投稿は118記事

前半戦はハイスピードで投稿していたが、後半戦はスロー。100記事達成したが、自分が書ける内容をつらつらと書いてきただけで、自分の内外共に大きな変化はない。文中では少しだけ饒舌になったかもしれない。今のところブログ閉鎖は考えていないので、200記事に向けて、2年目もぼちぼち頑張りたいと思う。

 

ブログとは難儀なものだ。心の拠り所と化している日記とは違い、距離感がまだわからない。

わたしの表現を、どこかの誰かが見てくれている。第三者の目があるからこそ、読みやすい文にしたい。そう思って書いた文ほど違和感がひどくなる。

たとえば自分が何かを紹介したり、感想をまとめた記事。もちろん嘘は書いていないが、掘り下げが足りないのか、言葉の選び方がよくないのか、自分の本当の言葉じゃない気がして羞恥を感じる。心境を吐露した記事は、そういった違和感がない。だからたまに読み返したりできる。

 

誰かに必要とされる文と、自分が好きな文は異なるのだから、もっと他者の為にブログを書くべきなのでは。とこの1年間で何百回と思ってきたのだが、結局今のわたしにとって、文章はたぶん、単なる救いでしかない。だから結局自分のためにしかブログを書けないのが、わたしの弱点だ。

 

個人日記を3年ほど続けているが、内容物は感情の吹き溜まりだ。心のバランスを整え、次の一歩を踏み出すための命綱、と言えば聞こえはいいが、要するに混沌、自己満足の塊。しかしその充足感たるや、計り知れない。

書くことに救いを得なければ、誰が3年で1500も日記やメモをつけるものか。

書けば書くほど、自分はわりと文章が好きなのだなと思い至り、ブログを始めた。生まれてこの方主張が苦手な人間が、発信する機会を得た瞬間だ。

 

発信と感情の結露は異なる。

三者の目を意識すると、「読みやすくて」「発想力を褒めてもらえるような」文章が書きたいという欲望が頭をもたげる。せっかく産声を上げたのだから、褒めてもらいたいと内なる幼児が喚く。

全く不器用さんである。適当に喋り散らして評価されるなら誰も苦労しない。

 

救いを救いのまま庭で大切に水をやるか、花として商品にするか。欲しているのは前者でしかない。

誰に阿る必要のない、しかし外界に接した広い空間で、もっと自由に飛び回りたいと思う。もっと自分が書く文章を気に入りたい。あわよくば、1人にでも意図が伝わるように書きたいと思う。

 

 

2年目、これからについて。

さらに気合を入れるぞ!という気概はない。結局今まで通りコツコツと、気が向いたときにブログを書いていく。

ただもう少しだけ、自分が読み返せる記事を増やしたいと思う。方法は言語化できないが、たぶん試行錯誤するうち、気に入ったスタイルが見えてくるだろう。期待。

 

結局わたしは普段口下手な分、ブログを通じて自分語りがしたいだけなんだろう。お山の大将でいたいんだろう。そんな稚拙でちっぽけな人間を、よかったら2年目もお見守りください。よろしくお願いします。

【漫画感想】推しの子1~3

読んだ本・漫画の備忘録をつけていくことにした。

今回は「推しの子

内容にネタバレを含みますので、ぜひ読了後にお読みください。

 

 

 

 

推しの子1

 

 

この物語はフィクションである

というか

この世の大抵はフィクションである

この芸能界(せかい)において 嘘は武器だ

 

物語の概要

産婦人科医ゴローには、推しのアイドルがいる。アイドルグループB小町のアイだ。

彼の元に、推しのアイが妊娠した状態で現れる。

子供がいることを隠しアイドルは続ける、嘘をとびきりの愛だと告げるアイを、ファンとして支える決意をするゴロー。しかし彼は突然何者かに殺害され命を落とす。

気づいたとき、彼はアイの子供に生まれ変わっていた。

 

原作は「かぐや様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳戦〜」の赤坂アカさん。

作画は横槍メンゴさん。

 

 

ネタバレ感想

推しが16歳で妊娠。それだけでもセンシティブなテーマなのに、ページをめくるごとに不穏な気配を帯びていく第1巻。

双子のアクアは頭脳派、ルビーは直観派。2人が対照的に描かれており、重いテーマにも関わらず作品の軽快さがすごい。アイへの想いを体現するべく2人が生きる様は、誰しもがもつ「推しの存在」の偉大さを印象付ける。

 

展開が神がかっている作品であるが、登場人物の台詞もまた、いい。全てを引用したくなる。中でも1巻は、アイの姿を目に焼き付けてほしい。

彼女がアイドルをする理由は、決して誰しもが憧れるきらきらしたものではない。彼女が誰よりも愛を求めている。不器用だけれど誰よりも熱情的で人間くさくて、たとえ一旦カメラが止まっても、魅力的。瞳の奥にはじける星のような、火花のような、偶像としてのとびきりの生き様。アイという美しい人間を描いてくれて、ありがとうと伝えたい。

 

 

推しの子2

 

 

アクアの演技、ずっと努力してきた人の演技って感じがして私は好き(略)
こんな前も後ろも真っ暗な世界で一緒にもがいてた奴が居たんだって分かって
それだけで十分

 

物語の概要

アイ亡きあと、ルビーは母のようなアイドルになるため、アクアは推しを奪った犯人への復讐のため、芸能界入りを狙っていた。

芸能科のある陽東高校の入学試験を受け、アクアはかつて共演した天才子役・有馬かなに再会。彼女がヒロインを務める、漫画原作の恋愛ドラマに出演を打診される。

プロデューサーはかつてアイと交流のある人物だと知り、さらなる情報を得るためアクアは新人役者として撮影に挑むことになる。

 

 

ネタバレ感想

漫画原作の恋愛ドラマにありがちな、拙い役者陣、制作側都合の改変、現場と原作者との意識の剥離が描かれていく第2巻。

「観れる」作品にするため、本来の実力を投げ捨ててまで全体の調整役に回る有馬に、プロ意識を覚えると共に歯がゆさを感じた。アクアが現場にやってきたのは最終回の撮影日。この日に至るまで、有馬は一人孤独に耐えてきたのだろう。

アクアが自身の戦い方を悟り、有馬の抑圧された情熱を解放させるシーンに、胸が熱くなった。1巻に引き続き、展開における緊張と弛緩のタイミングが上手すぎる。

登場人物の思惑が錯綜し、次巻への期待が膨らむ。

 

 

推しの子3

 

 

芸能は私達そのものがコンテンツ

深淵を覗く時

深淵もまたこちらを覗いている事を忘れてはいけない

 

物語の概要

恋愛リアリティショー「今からガチ恋♡はじめます」、通称「今ガチ」に出演することになったアクア。構成に懸念を感じつつも、共演する高校生たちと親交を深めていく。

撮影が進み、個人差が浮き彫りになる中、事件は起こる。

火種が小さくともネットの影響力は計り知れない。エゴサから始まる、怒涛の第3巻。

 

 

ネタバレ感想

エグい結末だ。復讐のため、自身が命を救った少女を利用するのだな。

目的のためなら手段を選ばないタイプがいる。天秤の片側に倫理観すらのせれるのは何故だろうと思うのだが、絶望や喪失を経験すると世界は一変するのかもしれない。

アクアの行為の意味を知ったとき、あかねはどう思うのだろう。どうか天賦の才を誇り、強く生きていってほしいよ。

 

アクアは自身とアイの関係性に疑問を持つけど、読者としてもアクアの解答が知りたい。『あかねにガチ恋なんて許さない、お前は己の過去ととことん向き合ってもらう』物語の盛り上がりを期待し、黒い気持ちになる。でも最後には、アイのように愛を知って、幸せになってほしいんだ。

 

3巻の有馬。有馬は嘘が苦手だから、嘘まみれのアクアにいつも翻弄されている。可哀相だけど、嘘にちゃんと傷ついてくれる有馬が可愛い。

人生はそんなに上手くいかないけど、報われる瞬間もあると信じて努力し続ける。泥臭い生き方しかできない有馬が、好きだ。

味の素さんのレシピ「豚ひき肉かたまり焼き」を作ってみた

Twitterで豚ひき肉を使ったレシピがバズっていた。

食品企業の老舗中の老舗、味の素さん提供のこちらのレシピ。

 

park.ajinomoto.co.jp

 

豚ひき肉をパックに入れたまま、マヨネーズ・片栗粉を入れてこねこね。塊にしたらそのままフライパンで蒸し焼きにする、まさに荒業のレシピ。

Twitterの反応の大半は「こういうのでいいんだよ、こういうので!」であった。乗じてわたしも「味の素がOK出してるんだろ、へっへっへ、ありがてぇありがてぇ」と、大企業お墨付きの手抜きご飯の登場に歓喜した。

 

スーパーの豚ひき肉が安い時を見計らい、さっそく作ってみた。

パックの中で材料を全て1つの肉塊にまとめあげる。接触るのが躊躇われたため、ビニール袋を手袋代わりに使用。塊は想像以上に柔らかく、心もとなかった。普段料理をしない人間だから、ひき肉の触感の基準値などわからぬ。

 

フライパンを中火で熱し、油をひかずに塊を投入。じゅうっという音が「料理をしてる」感を掻き立てる。ふたをして待つこと4分。ふたを開けてひっくり返すと、茶色の焦げ目が驚くほど均一についていた。

感動に先立ち、不安が心を覆う。料理の見た目に関して一切の知識のないわたしだ。頼みの綱は味の素さんのレシピ写真のみ。完成写真から1ミリでもずれると、妙に恐怖を覚える。果たして食べれる料理ができあがるのだろうか。

 

再びふたをして3分。レシピの指示通りに菜箸を表面にさすと、透明な肉汁が出てきたのでおそらく上出来だろうと目論む。本来なら粗熱を取って完成だが、夕食の主菜にするので熱々のうちにいただくことにする。

出来上がったのが、こちら。

 

ででん

 

レシピの半量分で作ったので、サイズはやや小さめだ。

さて肝心の味はいかがかな。もぐもぐ。

 

なかなかの、旨し。

ほどよく水分(油分?)が残っていて、表面はこんがり、中はふっくら。

肉の密度が高いのにくどすぎない、胃腸に優しいハンバーグである。

表面に焦げ目をつけ蒸し焼きにしたので、肉汁が流れ出ずジューシー。おかげで食べている間も、熱が逃げないのも嬉しい。箸でほくほくと切り分けると、そのたびにほわぁと湯気があがる。

 

主食にトースト、副菜に小松菜のお浸しと、アボカドとトマトのオリーブオイル和えを用意し共にいただく。

相性の良さゆえ、最後にはトーストをバンズ代わりにし、かたまり焼き・アボカド・トマトを挟んで食べていたのは内緒だ。

 

料理初心者のわたしも簡単に作れたし、シンプルで優しい味わいから、子供から大人まで全年代に喜ばれる料理だと思う。冷蔵庫で3~4日保存できるため、お弁当にも最適。

塩のみでも十分美味しかったが、ケチャップやソース、クレイジーソルトをかけても楽しめそうだ。

料理苦手なあなたも、一緒に豚ひき肉のかたまり焼き、作ろうではありませぬか。

「うつヌケ」、そして「はじめての森田療法」に救われた話

前記事の、別視点を話をする。

 

前の記事はこちら↓

clton.hatenablog.jp

 

 

ここ最近色々と問題を抱え、悩みながら過ごしていた。

この問題はいつ解決するのだろう、3日後? 1か月後? 3か月後? もしかすると年単位、一生解決しない事柄なのかもしれない。見えない未来を思えば思うほど、マイナス思考に陥る。鬱々としていく精神。感情が両手に抱えきれなくなってきたところで、精神のお守り代わりの本「うつヌケ」を手に取った。

回復のヒントを探してぺらぺらページをめくっていると、大槻ケンヂさんの経験談の中に気になる言葉があった。「森田療法」だ。

 

それは仏教の考え方をとり入れた治療法で

「不安」も「葛藤」もなくすることはできない

人間生きていく限り 老いも病気も死もさけられない

だから「不安」はあるがままにすておいて

今自分がすべきことをすればいい

 

そのうえで

成功しても失敗しても その人生はまちがいではない

ここでボクは自分を俯瞰する視点を持てるようになって

一気に気が楽になりました

 

森田療法の考え方が、状況を打破するきっかけになるのではと、書店へと足を運んだ。

 

どの著者の、どの書籍がいいのか区別はつかない。専門書っぽいのは避け、弱ったメンタルにも優しい本を見繕う。

選んだのは北西憲二さんの「はじめての森田療法」。講談社現代新書の棚から探し当てた1冊だ。ちなみに同棚には「はじめての」と銘打たれた本が少なくとも3冊はあった。入門書を求める民の多さを目の当たりにした気がする。

 

自宅に帰って、人をダメにするソファの上で本を読み始めた。才能あふるる芸能人の大槻ケンヂさんを救った森田療法。わたしにも何らかの恩恵があることを祈りながらも、どこか半信半疑だった。期待を裏切られたショックを思うと、1冊の本を妄信するのは危険だからだ。

だが不安をよそに、本は非常に実のある内容かつ、今のわたしに必要な考え方がたくさんおさめられていた。

 

森田療法を雑に説明すると、森田正馬(もりたまさたけ)氏が創始した不安障害に対する精神療法だ。症状に注意が集中すると、思考や感情がますます症状にとらわれる。とらわれの精神を、いかにその人のあるがままに解放していくか手助けする療法だ。

もっとちゃんと知りたい方は、公式ページをチェケラ。

 

morita-jikei.jp

 

読んでいくうちに、ちょっとずつ心が楽になっていった。

本より心に残った箇所を抜粋。

 

 

悩む人は、迷う人でもあります。過去を後悔し、先を憂い、今ここで生きていることを忘れがちです。(略)あるいは不安に駆られて、それを打ち消すために、本来の目的でないことに逃避しがちな人でもあります。そのときに感じている感情に圧倒されてしまうのです。

 

本位とは、物を測るのに、それを標準とする事で、人生でいえば、人生を観照して批判するところの、すなわち人生観の第一の条件とする観点を何をおくかという事について、自分の気分を第一におこうとするものを気分本位というのである。毎日の価値を気分で判断する。今日は終日悲観しながらも、一人前働いたという時に、悲観したからだめだというのを気分本位といい、一人前働いたから、それでよいというのを事実本位というのであります。

 

物事に悩む人は「できないこと」を何とかしようとして悪戦苦闘し、「できること」がおろそかになっているのです。(略)

「できないこと」をありのままに受け入れて、「できること」に注目し、それに取り組み、没頭することが問題の解決の鍵となるのです。

 

 

わたしが森田療法で気に入ったのは、非常に実践的である点だ。過去に起こった出来事は出来事として受け止めつつ、目前の現実に焦点を当てる。わきあがる感情を1つ1つ精査し、批判し、改善するのではなく、行動の結果を重視する。歩みを止めることなく進み続ける中で、変化を起こすという考え方。

独り暮らしをしていた若かりし頃、布団から起き上がれなくなくなった期間があった。ひたすら泣いて、母親との電話をわずかな心の支えにし、解決を時の流れに任せた。結果、立ち直ったのだからそういった手法も悪くはない。しかし今は守るべき家族がいて、行かねばならぬ仕事がある、大切な友もいる。無の時間に解決を丸投げしたくない。無作為に心の闇を放出することで、誰かを立ち上がり用の杖として乱用したくない。

現実に即していれば、苦しいけど仕事もできるし、社会で何らかの役に立てる。問題を抱えている期間中、本を繰り返し読みながら心を慰め、行動していった。感情は荒波にもまれていたけど、タスクをこなしていくと気が楽になったし、新たな発見もあった。

 

結果として、問題は時間が薬となり解決した。しかしこの期間、忍耐強くいられたのは本の助けがあったからだと思う。(あと話を穏やかに聞いてくれた親友たちよ…本当にありがとう)

当たり前の日常が返ってきた今こそ、これからの行動が問われていると感じる。問題が勃発したのはそもそもが心身の不調が理由なのだから。

 

不安や苦難に足を止めてしまいそうなとき、また「うつヌケ」と「はじめての森田療法」に立ち返ろうと思う。

問題を抱えきれず、感情に圧倒されそうになったときに読んでみてほしい。きっと前へ進むヒントがつかみ取れると思う。

 

 


うつヌケ うつトンネルを抜けた人たち 【電子書籍限定 フルカラーバージョン】【電子書籍】[ 田中 圭一 ]

 


はじめての森田療法 (講談社現代新書) [ 北西 憲二 ]
 

余裕がないからこそ、見えてきたこと

ここ最近色々と問題を抱え、悩みながら過ごしていた。余暇が出来た一方で心の余裕が消え、普段やっていた物事に対してのモチベーションが一気に無くなってしまった。

最近モデリングソフトblenderにはまりつつあった。チュートリアル動画で勉強に励んでいたが、問題が勃発して以来、興味の糸がぷっつりと切れた。

ゲームを遊ぶこと自体しんどくなった。空いた時間で、英語やドイツ語の勉強もできただろうが、一切やる気がわかない。放っておくと1日中布団の中で縮こまっていそうな状態だ。

 

これは、よくないぞ。

状況を打破しようと、家にあった自己啓発書「道は開ける」と、今回の期間に買い求めた森田療法の本の内容を頭の中で繰り返した。

 

一度にひとつずつ、ゆっくり淡々とこなしていくことを忘れてしまえば、私たちの心身の構造もまた、砂時計と同じように壊れてしまう。一度に砂をひと粒だけ、一度に仕事をひとつだけ。

デール・カーネギー「道は開ける」より)

 

物事に悩む人は「できないこと」を何とかしようとして悪戦苦闘し、「できること」がおろそかになっているのです。(略)

「できないこと」をありのままに受け入れて、「できること」に注目し、それに取り組み、没頭することが問題の解決の鍵となるのです。

(北西憲二「はじめての森田療法」より)

 

己の力でどうしようもならないこと、例えば未来の顛末や、他者の意志を変えることはできない。焦点を当てるべきは、わたしが今できること、と強く念じた。そして余計な感情に囚われぬよう、とにかく体を疲れさせようと決めた。

 

 

心の余裕は全くない。けれど心はあるがままに放っておき、わたしは家事をした。

せこせこと手先に集中している間は、脳内妄想が薄くなることに気づいた。

 

押し入れにしまい込んでいたクロスバイクを引っ張り出し、太陽がさんさんと降り注ぐ中、東目屋へ遠出をした。

岩木山神社へドライブし、問題解決の祈願をし、ついでに自然散策をした。

りんご公園に立ち寄り、りんご畑や生い茂る野草をぼんやり眺めながら、足をのばしてベンチに座り込んだりした。

大自然に身を投じるのは、美しい景色を堪能できる反面、どこか命の危険を感じる行為だ。自然の壮大さと己の矮小さを比べると、今抱えている問題がとてもちっぽけに感じた。ふつふつと絶望感が浮き上がってくる瞬間も確かにあるが、太陽の熱や、川の飛沫が悲壮感をかき消してくれたりする。心というものは、とても移ろいやすいものだと学んだ。

 

TVのバラエティ番組を次々と見たりした。

こんな状況で?とも思ったが、意外とリラックスして笑えた。

バラエティ以外に、お昼の情報番組やドラマなど、普段ならBGM程度にしか感じない番組にやけに癒された。人がはしゃいだり、笑ったり、前向きに生きようとしている姿に、勇気をもらえた。

 

日記をひたすら書いた。

日記に関しては普段と変わらぬ行動だが、文章量がやや増えた。室内でも屋外でも、感情がこぼれそうになったとき、いつでも日記が受け止めてくれた。

 

 

 

その後、浮き沈みはありながらも、何だかんだと行動している間に、問題は解決した。心の余裕が戻ってきたことで、何かに挑戦してみようというモチベーションも体内に戻ってきた。

それはとても喜ばしいことだ。しかし、余裕がないときにとった行動こそ、わたしという人間のエネルギーの源になっているのではないかと思い返す。余裕がないからこそ「できること」「やりたいこと」に着手できたのではないか。

「将来のため」とか「誰かのため」とか、耳ざわりのいいモットーを掲げて、行動指針を決めがちなわたし。すぐに「〇〇すべき」の考えに陥るわたし。

本当に自分にとって大切なことを、義務感で霞めないようにしたいと、切に思う。

 

 

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